社会保険労務士試験は社会人に人気の資格です。しかし、社労士試験は難易度が高い合格率が一桁%の国家試験でもあり「独学」での合格が難しいとも言われています。ただ、昨今は各種資格学校が一般向けに出版している参考書も優良なものも増えてきており、実際に独学で合格する事は可能です。初学者が独学で合格を目指す場合にどんな参考書を使用すると良いのでしょうか?
社会保険労務士試験独学者がまず考える参考書の種類
一般的に「参考書」とは試験勉強の道しるべともなる「教科書」のような本の事です。他にも「基本書・基本テキスト」等とも呼ばれています。この参考書に関しては各種資格スクールや通信講座を展開している企業がよく研究をしてつくっており、ある程度大手所の作っている参考書であれば、その内容に大きな差はないと思います。しかし、独学のスタート時の揃えるのは「参考書」だけではありません。最低限下記の5種類を揃える必要があると思います。
- 参考書
- 過去問題集(択一式)
- 問題集(択一式・選択式)
- 模擬試験
- 改正法(白書)テキスト
基本書、基本テキスト、と言われるものです。問題集や過去問に関しては複数使ってもよいのですが、参考書は1冊に絞り込んで使っていく事をお勧めします。
最近は「過去問から本試験への出題は減っている」等と言われており、昔ほどは過去問の重要性が減っているといった事も言われております。確かに2000年代位までは過去問「其の物」が出題される事も多かったようです。しかし、「過去問と同じ問題」(まさにラッキー問題)は出題される事が減っていても過去問と「同じ論点・周辺の論点」が出題される事はあります。「過去問」の上辺だけの暗記ではなくむしろ「理解」が問われている分重要性はより増していると思います。
ここは意見の分かれる所かなと思います。僕は択一式については「過去問」だけで対応をしました。正直、過去問に加えて別の択一式問題集に手を広げる余裕はなかったです。ただ、「選択式」の問題集は一つ揃えておくべきだと思います。
個人的に、「模擬試験」を「複数社」で受けるのは必須だと考えます。同じスクールや通信講座の系統と同じ模擬試験だけの受験は危険かなと思います。模擬試験にも出題の傾向のようなものがあるので最低でも2系統の模擬試験を受験をおススメします。
社会保険労務士試験に関する法律は「改正」が多いですね。また、「労働に関する一般常識」「社会保険jに関する一般常識」では白書からの出題もあります。改正も白書も毎年の事ですので対策は直前期になります。
社会保険労務士独学者が選ぶべき参考書(基本書・基本テキスト)
書店に行くと各種資格学校やスクールのテキストが並んでいますね。正直、前述の通り大手各種資格スクールや通信講座から出版されているテキストはよく考えて作られており完成度は高く網羅されている内容に大きな差はないと思います。
ただ、8月の国家試験後にはネット上に「このA社の参考書には(出題された)この論点は殆ど触れられていなかった!」といった情報や、逆に「(出題された)この論点はB社の参考書にはあった!」といった情報が記載されており、初めて受験を考える方は心配になる部分もあると思います。
確かに、細かい論点に関しては詳しく触れられていない部分はあるかと思いますが、それは何処の参考書であってもあり得る事です。大手資格スクールの出している参考書は概ね1,000頁位にまとまっているのですが「細かい論点まで詳細」に記載すればこの容量では追いつかないと思います。まずは、「基本を押さえる」ために参考書があります。また、複数社の参考書を並行して学習する余裕はないと思います。
「参考書」は何度も回す(繰り返し読む、調べる)事で合格するまで苦楽を共にするものだと考えて下さい。参考書を選択する時は「レイアウト」や「読み易さ」等好みもあると思いますのでご自身の目で見てこの1冊というのを決めて下さい。
社会保険労務士独学者に選ばれる参考書
お勧めの参考書を下記に紹介させて頂きます。なお、こちらはランキング形式ではありません。この辺りは伝統ある参考書なのでどれも信頼性は高いと思います。苦楽を共にする相棒を決めて下さいね。
※ランキングが知りたい方はAmazon等で「社会保険労務士の資格・検定 の 売れ筋ランキング」を確認して頂くと現在のランキングが分かります。
大手資格スクールのTAC社から出版されています。独学者には長年愛用されている参考書です。(※旧:ナンバーワン社労士 必修テキスト)
TAC社は資格学校としても「社会保険労務士試験」には力を入れている学校という事もあり、長期に渡り高い人気を維持しています。
通信教育の世界では老舗のユーキャンから出版されている「速習レッスン」も人気の参考書になります。ユーキャンは特に「初学者」向けを意識していますね。解説も平易な言葉で記載されており初学者の理解促進を意識していると思います。
こちらも長く社労士受験生に愛用されている基本書になります。僕自身はこの系列から出版されている「改正法・白書対策テキスト(直前期販売)」を使用たのですが、とてもシンプルで使いやすかったのが印象に残っています。
有名どころは上記3つになると思います。この辺りであれば問題なく「合格までの心強い相棒」を務めてくれる参考書だと思います。
社会保険労務士独学者にお勧めの過去問
前述の通り過去問の重要性は今も変わっていないと思います。確かに「初見で過去問から」と分かるような問題はかなり減っていると言われ、現在の試験はより「理解」が問われるといった事も間違いではないでしょう。ただ、「理解促進」のためにはやはりアウトプット(問題を解く)が必要でそのためにはある程度問題を解く必要があります。そのための教材にはやはり過去問が最も適していると思います。
僕自身も試験勉強中はテキストと過去問の繰り返しで理解に努めていました。僕が利用していたのは「力の3000題」という社会保険労務士の受験ではよく知られた過去問題集でした。こちらは過去問10年分がおそらく唯一一冊にまとまっておりコストパフォーマンス・物理的パフォーマンス(1冊なので)も良いと思い使っていました。
ただ、1冊に纏まっている分解説がやや薄いのが難点でした。1週目、2週目はかなり苦労をして解いていましたね。そして・・・残念な事にリリースは2015年を持って最後となってしまったようです。
社会保険労務士独学者の過去問選びのポイント
これはズバリ「10年分」「一問一答形式」は必須だと思います。これに関しては「通信講座」や「資格スクール」に申し込んだ方は注意が必要です。各種資格学校や通信講座の場合、過去問10年分を揃えていない(オプションでの申込)となっている場合が多いです。僕自身は最初、「資格スクール」に通ったのですが過去問はついていませんでした。
初学者の方でスクールや通信講座に申し込むと講座に内包されている問題集(過去5年分や5肢択一択一式等)でも充分かな?と考えがちです。何しろ送られてくる「教材の量」に最初は圧倒されると思います。そこからさらに問題集・・・なんて考えると気が重くなりますね。
スクールのスタッフ(講師の方は過去問集10年分購入を勧めると思います)の方も、必ずしも「購入」を勧めて(教えて)くれません。まあ、「講座以外にも外部教材(過去問10年分)」と言えば購入者としては「この講座だけでは足りないの?」「なんで必要なのにないの?」となりますからね。それでも!一問一答形式の過去問10年分は必ず必ず購入したいところです。
勿論、独学であればなおの事「10年分一問一答形式」は必須だと思います。合格が見える頃には「過去問10年分」は恐らくほぼ理解(暗記)をしていると思います。そこまで来て「当落線上」に到達したという感じだと思います。また、多少金額は張るのですが下記のような一問一答形式の過去問10年分をお勧めします。
※4冊に分かれているので全て揃えると6,000円位になります・・・!
社会保険労務士独学者にお勧めの問題集
個人的には「過去問10年分」があれば択一式の問題集は必要ないと考えています。勤めながらの場合過去問10年分を回しながら問題集まで手を付けるのは時間的にかなり制約があり難しい部分もあると思います。では「選択式」の問題集は必要でしょうか?選択式に関しては択一式の過去問を回しているうちにかなり対策が出来てしまいます。実際、合格をされた方でも選択式に関しては模擬試験や直前期の「改正法・白書対策」のみで対策をしたという方もいます。確かに狙われやすい問題に関しては直前期の模擬試験や白書対策で充分対策が打てると思います。
しかし、初学者で独学者の場合には基本的な問題にも注意が必要です。特に、目的条文(つまり各条文の1条とか)や労災法と健保法で似た言い回しで異なる用語などはスクールに通っていると、講師が注意を促しますが、独学ですと見逃しがちになる場合があります。
皆が取れない問題と取るためではなく、「皆が取る問題を取りこぼさないために」選択式問題集に関しても一通りの問題は回しておくことをお勧めします。ただ、時間に制約がある方は「模擬試験」の受験を増やし選択式対策とする方法もあります。模擬試験を受験すると付録に「選択式予想問題」等もついてくる事が多いのでそれを徹底的に学習して、選択式の問題集に替えるという方法もあると思います。
社会保険労務士独学者の模擬試験
模擬試験を「複数社」で受けるのは必須だと考えます。同じスクールや通信講座の系統と同じ模擬試験だけの受験は危険かなと思います。模擬試験にも出題の傾向のようなものがあるので最低でも2系統の模擬試験を受験をおススメします。個人的に受験の経験がある模擬試験は
- TAC社
- LEC社
- ユーキャン
の3社です。この他にも「大原」や「クレアール」といった資格学校が模擬試験を展開しています。これらは全部受験・・・と言いたいところですが、TAC社は2回、LEC社は3回、ユーキャンも3回の模擬試験があり、勤めながらの場合は全部の消化は恐らく難しいと思います。TAC社は2回の模擬試験となっているのでTAC社とユーキャン、TAC社と大原社等なんとか2社の消化をお勧めします。
社会保険労務士独学者が選ぶ改正法(白書)対策
最後に改正法のテキストに関してです。お勧めは法改正と白書対策がセットになっているものです。初学者の場合には概ね参考書(基本テキスト)はその年の法改正には対応をしていると思います。(2年目、3年目となると既に覚えている知識を改正法に合わせて修正する必要がある)「何処が狙われやすい」かを理解しておくくらいで大丈夫だと思います。
一方で白書対策に関してはテキストにあるポイントは全て抑える位のつもりで直前期に対策をして下さい。白書に関しては「知っているか知らないか」いや「見た事があるかないか」といった種類の問題が出題される事もあります。足キリ基準がタイトな選択式問題では「見た事がある」だけでも大きな力になる事があります。
また、先程のコメントと矛盾するようなのですが・・・白書対策に関しては「深みにはまり過ぎない」事も必要です。直前期には他の科目もキッチリ仕上げなければならないので。僕が実際に使用したのは下記の改正法・白書対策本です。正直、資格スクールの「白書対策」よりもポイントが絞られており分かり易いと感じました。
社会保険労務士独学者が揃えるべき参考書のまとめ
さて、ここまで考察してきたまとめです。
- 社会保険労務士独学者の参考書は合格まで苦楽を共にする相棒。
- 過去問は一問一答形式の10年分は必須!
- 選択式の問題集は出来れば購入したい!
- 模擬試験は複数社なんとか受験しよう。
- 白書対策は直前期に、全体を俯瞰し深みに嵌らず。
(大手所であれば信頼性はある程度担保されている。)
(過去問そのものの出題が減少しても、理解促進のため過去問の重要性は変わらない。)
(独学者は特に、選択式での目的条文の理解や類似語の判断等の取りこぼしを防ぐ!)
(同系統の参考書と模擬試験だけでは危険なので、複数社の模試を受験しよう)
(白書対策本を1冊しっかりやりきる。時間のない直前期にあまり深みに嵌り過ぎない)